猫足バス
私は車の運転があまり好きではない。特に雪が降って道路が凍るともう遠出などしない。これまで住んできたアルバータ州のカルガリーは9月中に初雪が降る年が多かった。今にも落ちてきそうなまだ見ぬ雪にせき立てられて、秋分の日のお昼すぎにミニバンで一人、カルガリーからトランス・カナダを東へと向かった。途中の町を観光したりしながら毎日暗くなる前にはモテルをみつけ、3965kmの道のりをゆっくりと6日間かけてモントリオールに初めてやってきたのである。
モントリオールは都市なので、適当そうな宿を運転しながら見つけるなんて難しいかもと思い、その日の朝Mottawaという小さな町を出る前にモントリオールのダウンタウンの東(だと思う)にあるロフトの一室を予約しておいてよかった。夕方こんなに広いシティで目的地もなく忙しい高速を他の車達に合わせて飛ばしていたら、降りそこねてケベックシティまで行ってしまってたかもだ。実際に道路サインからモントリオールの矢印が消えて、ケベックシティの矢印だけになった時にはドキドキした。
運がついていたのか、長旅で腕があがったのか、割と迷わずに着いたロフトの屋根裏部屋から、日曜の夜というのにまだ賑わっている下の通りを見下ろしてニヤっと笑った。
さっそくサンデニ通りをフラっとして、サンドイッチをテイクアウトする。「ウーン?」と壁に書かれたフランス語のメニューをきっと険しい顔をして見つめていたのだろう、「右側に英語のメニューがありますよ」と若いスタッフが簡単に英語で教えてくれた。なんだ英語も大丈夫じゃん!と、カルガリーを出る前にモントリオールではフランス語しか通じないとかなり脅かされていた私はかなりホッとした。
1泊だけしたそのモントリオールの初宿は、部屋の一角に猫足バスがドンと置いてあった。確かに映画とかで見たことはあるし、部屋の雰囲気を盛り上げている。ただ問題は私には使い方がわからない。カルガリーではバスタブには当然シャワーカーテンがついていたし、モントリオールにくる途中で泊まった宿も全てそうだった。
その日は単にお風呂をパスしたが、つい最近移ったベースメントのお風呂もこのカーテンなし猫足バスだ。来年の春まで借りたのでそれまでお風呂をパスし続けるわけにもいかない。まだ数回使っただけだが、おそるおそる水を外にまき散らかさないように弱い水量でかがんでシャワーを浴びている。いや、そっとかけている。
モントリオールのバスタイムは、初心者の私にとってはリラックスやリフレッシュなどではなくストレス以外の何者でもなかった。








