バンクーバー賛歌

    モントリオールを遠く離れて、私はバンクーバー近郊の町バーナビーに滞在している。ダウンタウンまでスカイトレインとバスを乗り継いで30分、それでもこの街の雑然さには唖然とさせられる。

    モントリオールでは普通だった仏語が一切聞こえてこないのは勿論だが、日本人コミュニティーの大きさたるや羨ましい限りでもある。Depanneurの代わりにセブンイレブンが至る所にあって、日本食にも一切困らない。日本人が経営するコンビニもあれば指圧院それに美容院も普通にある。一番驚いたのはブックオフ等といった書店がある事か。自分や日本人の知人の為に日本語の書籍や日本のDVDを買い漁っているのは言うまでもない。太平洋を目の前に日本に半分帰って来たような気にもなる。バンクーバーに暮らす日本人が困っている事は殆どないと思われる。

    モントリオールは整然とした街のように感じるけれど、バンクーバーは言葉は汚いが「民族のごった煮」状態、この街を歩きながら感じたのは数年前までよく足を運んでいた豪州のシドニーによく似ていると個人的には感じた。中華系が居て、韓国語が聞こえ、街角の焼き栗屋では日本人のお嬢さんが焼き栗を売っている。この街では英語が喋れなくても暮らしていける街だ。

    モントリオールは東洋系が歩いていても華僑かインドシナ系であって、バンクーバー程はメトロポリタンではないように感じる。バイリンガルな街ではあるが。モントリオールは雑然と言うよりも「洒落た街」のようにも思う。仮に雑然と言ってもバンクーバーにはラーメン屋も日本の本屋もある、一方のモントリオールはお洒落なカフェーやミュゼがあるばかり。同じアパートの日本人の住人がしみじみ私に言っていた、「日本に居る時のようにラーメン屋でラーメンを啜ってみたい」、モントリオールでは叶いそうもない夢が、ここバンクーバーでは簡単に叶ってしまうのである。アパートのKさん、申し訳ないです。バンクーバーはそんな街なんです。

    私は九州男児なのでケベックの冬はどうも苦手である。でもちょいとお洒落で落ち着いていて整然としているモントリオールが私は大好きである。バンクーバーには治安が悪い箇所が数箇所あって、そこには注射針が散らばり、麻薬中毒者やアルコール依存症、はたまた薄ら寒い中を薄着で退屈そうにタバコを吸う娼婦を見かけたりする。「人間の成れの果て」の姿がバンクーバーでは見れるけれど、モントリオールでは見かけた事は一度もない。

    かつてこの街には華僑よりも日本人が先に到着し、大規模な日本人街を形成したというが、今かつての町並みがあった地域も治安は安定せず、近付くなと教わっている。殊にバンクーバーの中華街周辺は昼間ならともかく夜は危険地域になる、朝歩いていても居心地の悪さは相変わらずだ。モントリオールでは何かとお世話になっている中華街だが、場所が違えば治安も違ってくるのである。モントリオールで夜更けに帰宅しても身の危険を感じる事はまずないだろう。

    チャンネルは英語ばかりだが、Radio-Canadaだけが唯一仏語で放送して孤軍奮闘している。仏語を忘れぬようRadio-Canadaをぼんやり眺めつつ何とこの国の大きな事か!と思うバンクーバーは珍しく晴れ間が見えている。

    About the Author

    夢屋

    1978(昭和53)年、福岡市生まれ。明治学院大学文学部仏文学科卒。 韓国の海運会社の東京支店に勤めるものの、うつ病を発症して実家がある福岡で療養。韓国の会社にて韓国に関するコラムを連載、韓流に嵌った御婦人方から圧倒的な支持と評価を得る。うつ病治療の一環として海外生活を決断、明治学院の卒業論文でケベックを取り上げたのが縁で去年11月よりモントリオール在住。「本当に住む事になるとは・・」とは本人の弁。博多ラーメンと焼酎とサルサをこよなく愛する九州男児。

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