大きな手

Illust by Asa
時間的余裕が全くないショート映画の撮影日が迫ってきたとき、長いことやめていたタバコをまた吸い始めたくらいに、ストレスを抱えてしまっていた。撮影準備に追われてではない。お天気の問題だ。シナリオ・役者・カメラ・編集等の人工的な事は皆で頑張るだけだ。ただ、その変更・延期ができない野外撮影の当日の天候は「神のみぞ知る」である。
モントリオールは毎日雨模様で暗い日が続いていて、当日、天気予報はやはり一日中雨となっていた。でも実際は昼過ぎまでは青空が時々雨雲からのぞいて見えるくらいで、夕刻の野外撮影までこのままだったらいける、とは思いながらかなり不安だった。支度中に今度は天気予報が雷を伴った豪雨に変わって、もっとビビってしまった。テントつきの撮影場所を見つけていたので、そこに皆が時間通りに集れたら、ずぶ濡れていようが暗かろうが、もう撮影をするしかない。大丈夫、なんとかなる、と自分を奮い立たせて現場に行く。
手伝ってくれるありがたい人々へのあいさつも後回しにして、即撮影開始。皆頑張ってくれた。そして雨は一滴も空から落ちてこなかったのだ。後日にシナリオを変更して撮るしかないと思っていた、テント外でのスイカ割りのシーンまでちゃんと撮影できた。
実は私は撮影の前日にも、そのものの力を感じていた。その日、重要な小道具である野球バットを買いに行ったら、予算オーバーで買えず、どうしたものかと考えながらトボトボ歩いて家に帰っていたら、道中の建物の前の芝生にモップの棒の部分がゴミとしてポンと投げ捨てられていた。別に汚くもない。即拾って帰り、野球バットの代わりにスイカ割り用に使う事にした。野球バットよりモップの棒の方が、良いシーンが撮れたと思う。
目に見えないものが何ものなのか私は知らない。でもそのものがいつも私をみているのは知っている。助けてくれる時もあれば、戒めてくれる時もある。今回はきっと私なりに一生懸命頑張っていたから、助けてくれたと思う。どう考えても今までの頑張りの分は充分助けてもらったので、もう蓄えはない。また困った時にその大きな手をさりげなく差し伸ばしてもらえるように、またゼロから頑張り続けなければ。
目にはっきり見える知人・友人・プロの方達は、当たり前の様に協力してくれた。彼らへの感謝も込めて、良い作品に仕上げたい。











